国産のダイナミック一発イヤホンは世界と戦えるのか!?復活したTechnicsの技術の粋をかけた高級機EAH-TZ700の実力をチェック.
オーディオは昔から好きで,あれこれ試しながら自分好みのものをいつまでも探すスパイラルに陥っていたりします.
先日入手したXELENTO REMOTEもその一つで,ブイブイ言わす低音もなかなか出会えないもの.ダイナミック一発という潔さ,そこから得られるとても深みのあるいい低音でした.しかし残念ながらどうにもShure刺しが合わなかった.それもゆくゆく改善したのですが,また別の話.
最近のモニターイヤホンのような大きなハウジングにたくさんのドライバを入れたり,といったイヤホンもそれはそれでありだと思うのですが,装着感や低音の質といった点からもなかなかしっくりこず.ハイブリッドドライバでいいのでは,という意見もあるかと思うのですがハイブリッドで音がしっかりと繋がった印象のイヤホンにはまだ出会えていない状況.
そんな中で,
・Shure刺しではなく
・ダイナミック一発であり
・キラリとひかる技術が搭載されている
という,三拍子揃った食指を刺激してくるイヤホンが発売されていたので購入してみました.
meet the EAH-TZ700
購入したのはPanasonicのTechnicsブランドから発売されているEAH-TZ700です.
いつものことながらAmazonですぐ購入,すぐ入手のパターンを想定していたらどうやらそうもいかない.
価格.comで調べても価格情報が出ていないのです.つまり,店頭でのみしか購入できないシロモノ,という.このご時世こういう売り方をする時点で気合の入りようを垣間見ることができると思うのですが,いずれにしても店頭に行って買ってやりましたとも.
値段についてはまぁ...そんなところです.それはともかくとして,高揚感とともに開封をしてきますよ.箱はそこそこの重さがあって,手抜きな感じはしないですが,高級イヤホンのラインとしてはやや手抜き気味かなとは感じてしまいます.
ペナペナな外箱に,しっかりとした作りの厚紙の内箱といった具合.正直魅力的な外箱ではないですが,高級機ってパッケージを並べることはないと思うので,こんなところなのでしょう.
XELENTO REMOTEと比較.箱はどうでもいいですね.
裏面は技術的なことがチラホラと.ここになんと書いてあろうと試聴機が大事なので,最低限という感じ.モニターとかと同じですね.
サイズ感がLogicoolのPro Gaming
マウスとかと同じ.外箱と内箱で別れてるのも同じ.
開けていくとキャリングケースとご対面.無駄な演出をしないのは日本メーカーらしいといか.キャリングケースはそこまで手の込んだものという印象は受けないですね.
本体とご対面.ケーブルは予め3極が接続されています.
付属品はシンプル.リケーブルと少量のイヤーチップ.
4極も付属されています.主流は4極や5極だと思いますが,アンプがないので3.5mm3極のまま使うことにします.このケーブル,ONSOのOEMなんだと思うのですが,とても良いです.柔らかくしなやかで,若干ごつい印象はありますが,絡みにくいです.パール剤も練り込んであって高級感もある.もう一本予備にほしいくらいです.
onso イヤホン・ヘッドホン用リケーブル iect_03_bl4m
4.4mmバランス(5極)⇔MMCX [1.2m]
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AmaQuick
at 2020.08.02
onso
onso (2017-02-19T00:00:01Z)
¥9,900
onso (2017-02-19T00:00:01Z)
¥9,900
イヤーチップは最低限必要な量は付属されています.オリジナルのチップとのことで,軸を含めて柔らかめの設計です.保守部品として販売していたりはしないようですが,色々と刺さるので実用上問題はないです.
形は円形と楕円の2種類.個人的には円形で十分フィットしていたのと,楕円は逆にフィットするポイントを探すのが難しかったため諦めました.
XELENTOの方が充実した付属品でしたね.Complyのチップなんかも付属していたりして.逆に言えばそこにすらコストを割きたくないということなのか...
このキャリングケース,ドキドキする点があって,ケーブルがむき出しなんですよね.なので外からなにかかぶつかった時にケーブルを守ってくれないというのと,少しでも緩んでると引っかかってしまいそうだなという気がしました.
本体.合金のハウジングは非常にガッシリとしていて剛性の高さや加工精度の高さをうかがい知ることができます.MMCXコネクター周りもケアしてあって,全体的に堅牢で遊びのない作りです.
Technicsロゴ.ダサい.本体にくぼみがありますが,ここに親指をフィットさせながら摘んで装着すれば,左右が合ってくるというシロモノ.片側に突起をつけるとかで対応するメーカーもありますが,このやり方であればデザインも崩さず,とてもわかりやすくてよいです.因みに突起は突起でLサイドにさりげなく付いています.
個人的に少し気になっているのがフィルターで,このクラスにも関わらず一見簡単そうに交換できないという点です.安易に追加でフィルターを置いて音を変えるのも嫌ですし...修理対応になるのか何なのかは分かりませんが,数年後とんでもないことにならないといいのですが...
いわゆるモニターイヤホン型のデザインではないですし,光沢感を出して華美な演出をしているという感じでもないです.各所のレビューでも書かれていますが,パット見でのハイエンドイヤホンらしくなさ,というのはあるかと思います.触った感触や質感は充分にハイエンドではあるのですが...
この形なのでShure刺しはできなくもないですが,といったところで標準的なリスニングスタイルを推奨しているようです.ケーブルをもう少し柔らかくて細いものにすればShure刺しできるとは思います.
しばらく使っていたXROUND
AEROとの比較.パット見値段が10倍前後異なるという印象ではないですね...面白いイヤホンではありましたが,一旦封印します.
音質
バーンインは200時間.珍しく0時間からじっくりと使いながらのエージング(普段はお仕置部屋でノイズを流してます).このクラスということもあって,箱出しの状態でも十分綺麗になっていたのですが,使っていくとだんだん低音と高音が鳴るようになってきて,全体的に一枚ベールが取れた印象.わざわざハイレゾの音源をこのためだけに用意するのはアホらしいですし,聞き慣れない音源で音質の評価というのもよくわからないので,いつものルーティンでコメントを残しておきます.
ロックとか
まずロック.問題なく再生できます.高い解像度と相まってスルメ的に色んな曲を楽しめました.The
Who,Led Zeppelin,Stones,Queenなんかの60-70sのBritish
Rockを好んで聴く身からすると,Queenが一番楽しく聞けたかな,と思います.空間表現も得意な部類だとは思うのでライブ音源なんかもサラリときれいに鳴らしてくれます.
スローハンド・アット・70 -
エリック・クラプトン・ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール【初回生産限定盤Blu-ray+2CD/BONUS
DVD】
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AmaQuick
at 2020.08.02
エリック・クラプトン(出演)
ワードレコーズ (2015-11-04T00:00:01Z)
¥9,553 (中古品)
ワードレコーズ (2015-11-04T00:00:01Z)
¥9,553 (中古品)
個人的に合ってるな~と思ったのがEric ClaptonのSlowhand at
70の音源かなと.往年の楽曲を丁寧に演奏しているのも分かるし,参加メンバーの音が一音一音聞こえてきて,とてもよかった.ブーミーさがないので,キレの良いバスサウンドとギターの中高音域が楽しめます.どの曲もいいけれど,往年の焦らしに拍車がかかったCocaineはイントロ含めてギンギンになります.
全体としては好みが分かれるかもしれない.というより正直全体的に得意ではないかもしれないな,と思ったのはハードロック.Led
Zeppelinなんかが少し物足りないかな,とは感じました.という点でゴリゴリのハードロックには向かない気がしました.ハードロックには高音のシャリつきやギターの粗さへの味付けが少し足りないです.
ポップスとか
今の時代のポップスのいい音源を持っていないので,特にリファレンスなく聴きましたが,素晴らしいですね.イージーリスニングにはとても合います.変な味付けや高音の刺さりが少ないため,聞き疲れしないです.
iTunesから高音質音源を適当に引っ張ってくるとすると,ランキング上位の髭男とかKing
Gnu辺り,よりトレンドなところで言えばYOASOBI辺りは卒なくこなしてくれますが,アコースティックな音源中心のあいみょんはとても気持ちいですね.音数の多い髭男なんかでも新しい楽しみ方をできると思います.
そして,洋楽でいくとしばしば聴くのがDavid
Fosterとか.個人的にJALユーザーとして欠かせないのがI Will Be There With
Youですが,篭もりなく聴くことができました.低音のバスサウンドなんかも見通しがよく広がってくれて気持ちいいです.
音楽のジャンル分けに精を出すことはないので,正しい選曲の中でも感想になってないですが,ポップスと思われるもの,歌が中心でバックで伴奏が入っているもの,という中ではどれも楽しめます.一方で,音源の差をある程度はごまかしてくれるものの,いいものと悪いものの差は感じられてしまうのでその点のケアは必要かもしれませんね.
オーケストラとか
オーケストラの中心を占める弦楽器や管楽器って,肩に乗るサイズから,身長レベルの弦から発せられる波長まであるわけですよ.それをうまく表現できるか,というのが音響機器に課せられる使命とすると,このイヤホンは本当によくやってくれている.Xelentoのようなテスラドライバーここにありというような破壊的な低音,という訳ではないですが,十分に味をつけて非常に低いところから高いところまで表現してくれています.
このドライバー特有の機構,磁性流体を用いたダイナミックドライバー「プレシジョンモーションドライバー」と呼ばれるそうですが,は米屋とは違った低音サウンドをもたらしてくれており,ブーミーさで低域以外の音の解像度を落としてしまったり,埋もれさせてしまったりする感じが殆ど無いです.音源通りの音を鳴らしてくれているな,という印象でした.
手持ちにあるハイレゾ音源でヘビーローテションしているものとすれば,Distant
Worlds,FF11のオープニング音源とガルパン関連の楽曲(正統派から外れているので冷ややかな目線を感じますが).Xelentoと聴き比べると中高域の表現や篭もり感のなさ,という点では勝っていると思いますが,一点残念だったのがやはり低域.低域は出ている,が味付けの艶っぽさという点でXelentoが一歩リードしていると感じます.好みの問題ではあると思いますし,全体的にドンシャリ気味のXelentoはそういった意味で楽しみやすくチューニングしてある感じはします.
アニソンとか
アニソンというジャンルだと本当に多岐にわたりますが,とりあえずアイマスの楽曲をば.
最近のアイマス曲は765だけでなくSide Mもあったりして男性ボーカルなんてのもあるので本当に幅が広く,うまく均一に鳴らすのは難しいですが,本当に優等生的に鳴らしてくれます.Miracle Night,少しあっさりしているかなという印象を受けましたが途中から,イノタクサウンド全開になります.一番楽しめたのは9:02pm.メロウな感じの曲調で上から下まで出ていて,あずささんが直接脳に語りかけてきます.
THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!! Blu-ray "PERFECT
BOX!" (完全生産限定)
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AmaQuick
at 2020.08.02
オムニバス(出演), 765PRO ALLSTARS(アーティスト), 茅原実里(アーティスト),
下田麻美(アーティスト), 浅倉杏美(アーティスト)
ランティス (2015-05-13T00:00:01Z)
¥7,703 (中古品)
ランティス (2015-05-13T00:00:01Z)
¥7,703 (中古品)
そして感動したのが9thの音源.もともと生バンドでとても好きなライブだったのですが,これはすごい.高い分解能と相まって新しい曲を聞いているかのようです.ライブ音源ということもありやや低音が厚めになっていますが,それでも尚とても解像度が高いので,色々な音が聞こえてきて,新しい発見ができます.オーディオを変える楽しみの一つですね.
最近ちょいちょい聴いているPoppin'Party.基本ハイレゾも同時配信されていて,Poppin'on!をアルバムで持っていたりする.ベタなところで行くとSTAR BEAT!~ホシノコドウ~なんかはコーラスの声も別れて聞き分けられてとても楽しいですね.夢みるSunflowerはギターの粗さも表現できていて,全体的にノリよく聴けます.高音やサ行が刺さることがないので,聴き疲れなくまとまりよく楽しめると思います.
まとめ
好き勝手につらつらと書いてしまいましたが,まず言えるのは,ただただいい音に作ってあるということでしょうか.解像度含め,全音域がなるべく均一に重なり合わないように出力されていて,実に日本のオーディオメーカー的な音作りだと思います.でも実際聴いていくと豊かな低音が仄かな良いスパイスになっていて,音楽全体も楽しめるように設計されているなと感じました.
全体的な傾向はやや低音寄りのフラット~ドンシャリといったところだと思います.Xelentoを少しマイルドにして解像度をぐんと上げたような印象,といえば購入したい人の参考になるのではないかと思いますが...ダイナミック一発でありながら,大味で音楽を楽しめるようにチューニングしてきたXelentoに比べ,味はちゃんと付いていながら,ある程度控えめに上品に仕上げてきたEAH-TZ700で好みは分かれるかもしれませんが,非常に高い解像度,音場といった点を踏まえるとEAH-TZ700が一歩リードしているかなと思います.
購入からして手の出しづらい製品ではありますが,数多の日本のオーディオメーカーが撤退し,マルチドライバの高級機が群雄割拠するハイエンドイヤホンの世界で,テクノロジーと完成度を以て十分に戦える製品に感じました.やっぱりダイナミック,という人にとっては唯一に近い選択肢ですが,期待を裏切らない音質でした.